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2007年11月08日

医龍 第2話

「神の手と悪魔の薬」

伊集院と患者文子の交流。
悲しい結末になるけど、伊集院は精神的に大きなものを得る。
そして朝田はバチスタ・チームの二人目に指名する。

セリフ完全

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

病室、患者に話しかけている。
伊集院「朝田って男はホントにとんでもなくって…、
 確かに腕はいいかもしれないけど。
 あんなヤツが来て、僕まで変なトラブルに巻き込まれないかって。
 ただでさえ落ちこぼれなのに、これ以上、教授ににらまれたら…」
文子(ふみこ)「先生」
伊集院「わっ!」
文子「すみません。わざわざ様子を見に来ていただいて」
伊集院「すいません! 病室を間違えました。
 あの…、僕、なんていうか、意識のない患者さん…、
 あっ、いや、そうじゃなくて、
 お休みになってる患者さんの病室に入って
 独り言を言ってしまう癖があって…」
文子「ありがとうございます」
伊集院「いや…。そうじゃなくって…。
 すいません! 失礼しました!」

医局で寝転がっている朝田を起こし、
加藤「バチスタ手術のほう、今、適応患者を探してもらってる」
朝田「ああ」
加藤「あと、この間の手術、
 野口教授まで話がいかないよう、穏便に片付けといたから」
朝田「ご苦労さん」
加藤「罰として、しばらく当直やってもらうわ。僕ちゃんと」
朝田「『僕ちゃん』?」

更衣室、
伊集院「朝田と当直? 木原先生とじゃなかったんですか?」
木原「押しつけたんだよ。そのぐらいしないと腹の虫が治まらん。
伊集院「だけど…、なんで僕があんなトラブルメーカーと!
 また何か問題が起こったらどうすれば…!」
加藤「お疲れさま」
木原「あっ、加藤先生!
 あっ、ちょっと待ってください、ちょっと待ってください
 加藤先生、出来ました!」

当直、
伊集院「何も起こりませんように…。何も起こりませんように…」
朝田「おい、研修医」
伊集院「なんですか?」
朝田「何か食べとけよ。もたないぞ」
伊集院「何かあったら、すぐ木原先生に連絡しますから」
朝田「キノシタ?」
伊集院「木原先生です」
(そこへ電話)
伊集院「はい!」

緊急手術、
朝田「状態は?」
看護師「急性虫垂炎です」
(朝田はそれを聞いて手術台から遠ざかり静かに見守る)
伊集院「何してるんです?」
朝田「お前が切るんだろ?」
伊集院「はっ?」
朝田「お前が電話を取った。お前が切れ」
伊集院「なに言ってるんですか! 僕、まだ新入りですよ!」
朝田「だから?」
伊集院「だからって…。
 指導医の下でごく簡単なやつを4例しか切ったことがありません」
朝田「お前の年なら100例は切って当たり前だ」
伊集院「だけど、日本の大学じゃ…」
朝田「いいから切れ」
川田「あの…、急性虫垂炎ですし、そんなに難しい手術では…」
(伊集院に看護師たちの視線が集中する)
伊集院「分かりました。やりますよ。やればいいんでしょ。
 なんてヤツだ。メス」
看護師「はい」
伊集院「教科書では確か…、
 へそと上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)の
 3分の1点を切開する。
 止血。鑷子」
看護師「はい」
伊集院「万一の時は、あとは頼みますよ」
朝田「お前のオペはお前の責任だ」
 ↑めずらしく気の抜けたセリフで楽しい
(ブルブル震える伊集院)
看護師「落ち着いて、先生」
(深呼吸)
伊集院「ミクリッツ」
看護師「はい」
伊集院「あとは虫垂を切除すれば…。長鑷子(ちょうせっし)」
看護師「はい」
伊集院「教科書では確かこれをたどっていけば…。ない。ない!」
看護師「ない?」
伊集院「虫垂が…ない!」
北岡「先生!」
看護師「朝田先生!」
朝田「ダグラス窩(ダグラスか)。
 ダグラス窩に入れてみろ」
伊集院「ダグラス窩?
 確か、直腸と子宮の間のくぼみ?
 (手を入れて探ってみると…)あった…。虫垂切除!」
看護師「はい」

無事終了、廊下を歩き、
伊集院「なんで僕に切らせたんですか!
 もし何かあったら…」
朝田「いいか、教科書どおりの症例なんてひとつもない。
 だから外科医は、実際に数を切ることでしか成長しない。覚えとけ」
伊集院「だからって、もし患者になにかあったら…」
 (うめき声が聞こえてきて、朝田が向かう)
伊集院「ちょ…、ちょっと。また余計なことを。
 ここは内科病棟…。まったく…」

病室、
文子「うううう…!」
伊集院「おばあちゃん?」
西野「佐々木さん! 大丈夫ですか!?」
朝田「おい、担当医を呼べ」
西野「担当医は今いません」
朝田「いないってどういうことだ?
 この症状はイレウスかもしれないぞ」
西野「違います。抗がん剤です」
朝田「抗がん剤?」
文子「あああ…」

廊下、
西野「ABC製薬が開発中のTMT3という、
 今、呼吸器内科で治験を進めている新型の抗がん剤です」
伊集院「治験?」
朝田「どういうことだ?」
伊集院「肺ガン患者を使って、
 新薬の薬効データを収集してるってわけか」
西野「でも吐き気がひどくて」
朝田「TMT3は、副作用が強すぎて
 治験から撤退してる病院もある薬だ。
 臨床的にはとても使い切れない」
伊集院「ガン細胞は殺した。でも患者も死んだってやつ」
西野「末期がんの患者をあんなに苦しめる必要があるんですか?」
伊集院「末期がん?
 でも、末期がんの患者だから、
 どうせダメだから、何だってするんだよ」
西野「医者の都合で、患者を実験台にしてるんです」

オープニング

CM

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ゴルフ場、
男たち(雑用)「ナイスショットでーす!」

東郷「時に、野口教授、胸部心臓外科の今年の目玉は、
 バチスタ手術らしいですな」
男(製薬会社員)「そのために専門の外科医を呼ばれたとか」
野口「さすが耳が早い。東郷先生のほうは?」
東郷「ウチは、なっ?」
男「おかげさまでTMT3の治験もあともう一息です。
 あと十例有効のデータがあれば、薬事審議会に提出できます」
野口「なるほど、抗がん剤ですか」
男「新薬の認可が下りれば、
 お二人にお譲りしたわが社の株価は二倍…、いや三倍に」

男「(OBしたボールを見つけ)あっ、投げろ。ほら。
 ありました! セーフ!」

東郷「しっかり頼むよ、渋沢くん、あと十例」
渋沢「任せてください」

医局、
ミキ「失礼します!
 (キョロキョロ見渡して)あっ、朝田先生」
朝田「ミキ」
(木原がかわいい子の登場に目が釘付け)
ミキ「やっぱり白衣が似合うよ〜」
朝田「お前、体は?」
ミキ「うん、一応大丈夫。
 とりあえず万全になるまでシフト楽にしてもらってるし。
 あっ、はい、これ」
「なんだ、これ?」
「バチスタ手術のためのチーム・ドラゴン。
 この星はわたし。
 チーム・ドラゴンの一人目のメンバーってこと。
 ねえ、他のメンバーは集まった?
 (無言の朝田を見て)どうかした?」
朝田「ちょっと頼まれてくれ」
ミキ「んっ? 何? どうしたの?」

内科受付、
看護師「渋沢先生に頼まれた? 佐々木さんの経過を見るように?」
ミキ「はい。手術になるかもしれないので。よろしくお願いします」
看護師「はい」
藤吉登場、会話を耳にし、朝田の姿を見て仕込みだと察する。

西野「渋沢先生!
 ホントにもう投薬はやめてください!」
渋沢「何言ってるんだ? ご家族が望まれてることじゃないか」
西野「でも吐き気もひどいし、食事ものどを通らないし」
渋沢「このまま放っておいてもどうせ助からん。
 少しでも可能性のあるほうにかけるのが、
 医者の務めだ。違うか?」

CTを見る朝田、
伊集院「何やってるんですか!? 他の医局の患者のデータを?」
朝田「やはり、もってあと三ヶ月だな。
 エンドステージ。
 末期の患者ならダメでもともと。
 副作用の苦痛も、医師の主観的判断でどうにでも書ける。
 それでもレントゲン上、がん細胞がわずかでも縮小、
 あるいは不変でも、その薬は『有効』となる。
 製薬会社から接待攻勢受けてる病院側にしてみたら、
 何が何でも有効にしなきゃならない」
ミキ「ひどい…。病院側の勝手な都合じゃない」
伊集院「でも、一応本人か家族の承諾はとってあるはずですよ」
ミキ「本人に告知はされてないらしいし、
 ご家族もまさかこんなひどい薬だとは…。
 他の病院に転院すれば、
 もっといい治療が受けられるかもしれないんでしょ?」
藤吉「ムダだ。担当医は治験患者を離さない」
伊集院「あっ、すいません! 僕はやめろって…」
朝田「あんたも、抗がん剤の投薬、知ってるのか?
 副作用のひどさも」
藤吉「抗がん剤の新薬は、患者や家族にとって、
 最後にすがる魔法の薬だ」
朝田「だけど家族には、苦痛と激しい吐き気が伴うのに、
 ほとんど効かないという真実を知らされていない」
藤吉「ああ。だが、本人と家族の同意がないと手出しは出来ない。
 それに佐々木さんは呼吸器内科の患者。
 循環器内科の俺や、ましてや、お前ら外科ができることはない」
朝田「外科としてはな」

階段、
伊集院「もうやめましょうよ!
 こんなことを野口教授に知れたら…」
朝田「伊集院」
伊集院「なんですか?」
朝田「お前、あの患者と知り合いなんだろ?」
伊集院「し…、知り合いじゃないですよ。
 それに、患者とは一線を引けと、上の人に言われています」
朝田「そうか」

伊集院が佐々木文子の病室にやって来ると、
先に朝田が来ていて優しく介抱している。
文子「すいませんね。おかげさまでだいぶよく…。
 そうですか、先生はあのお若い先生の上の方…。
 あの先生はわざわざ様子を見に来てくださったんですよ。
 ホント、先生みたいな方ばかりだったらいいのにねえ」

それを聞いた伊集院は足を返して帰ろうとする。
五郎「あの、先生。佐々木です。
 この間来ていただいた先生ですよね?」
伊集院「いや…、僕は…」
五郎「家内が話してくれたんです。
 若い先生がわざわざ見に来てくださったって。
 どうもありがとうございます」
伊集院「あっ、いや、あの…、僕まだ下っ端だし、
 それに医局も違うし…。失礼します」
五郎「あの、すいません。
 これからもちょくちょくお顔を出してやっていただけませんか?」
伊集院「いや、それは…」
五郎「あんなにうれしそうに病院のこと話すのは
 入院して初めてだったもんで。
 あいつはね、昔から我慢強くて、
 わたしの前では『苦しい』なんて一言も言わないんですよ。
 あの薬が効いてくれるといいんですけどね」

病室、朝田に話しかける。
文子「先生、これ、召し上がります?
 わたしが好きだから、いつも主人が買ってきてくれるんですけど、
 お薬のせいで、まあ吐き気がひどくてねえ。
 でもあの人に悪いから、いつもこうして隠してるの。
 食べたいんですけどねえ」

CM

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

教授室、
野口「どういうこと?
 呼吸器内科の渋沢先生にクレームつけたってホント?」
渋沢「抗がん剤の中止を進言されましたよ」
加藤「申し訳ありません。わたしも今報告を聞いて…」
東郷「他の医局の方針に口出しするなんて、
 大学病院じゃタブーの中のタブーだよ、君!
 何とか言ったらどうだ? 君も組織の一員である以上、
 最低限のルールを守るべきだろ!」
朝田「俺は、組織の一員である前に、医者だ」
東郷「なに?」
朝田「この組織には、ほかにいないみたいだけどなあ」
加藤「朝田先生!」
渋沢「内科のことが、外科に分かるのか!? えっ?
 素人が口だすな!」

佐々木夫婦がお散歩、
文子「先生? こんにちは」
伊集院「こんにちは」
五郎「あの、すいません、ちょっと見ててやっていただけませんか?」
伊集院「えっ? いや…」
五郎「あの、すいません。ちょっとトイレに。お願いします」
伊集院「あの、ちょっと」
文子「すいません、先生。ありがとう。
 先生、あの人、行きました?」
伊集院「えっ? ええ」
文子「あっ…。あっ…」
伊集院「大丈夫ですか? 苦しい?」
文子「あの人の前だと心配しちゃうから。
 気が小さいんです、あの人。
 ああ、おかげさまで治まった。
 さすが先生ですねえ。お若いのに、すごいわ」
伊集院「ケータイ持ってるんですか?」
文子「ああ、それ?
 何かの時にって息子がくれたんですけど、
 使い方が分からなくて」
伊集院「簡単ですよ」
文子「いや、ダメダメ。年寄りには無理よ」
伊集院「そんなことは…」
文子「年をとるとね、だんだん何も出来なくなるの。
 新しいことなんてとても。
 みんなに迷惑ばっかりかけて。
 もうさっさと死んでしまえばいいのにね、
 こんなおばあちゃん。フフ…」

加藤、夜のホテルでキーボードを叩く。なんと裸。
男がシャツを肩にかけてあげて首もとに手を回す。
加藤「邪魔」
霧島「熱心だな。リポート?」
加藤「だといいけど、謝罪文。わたしが一番書きたくないもの」
霧島「例の君が連れてきた外科医のトラブル?」
加藤「朝田龍太郎。最高の技術と最悪の反抗心」
霧島「バチスタは進んでんのか?」
加藤「まだ全然。適応患者探してるとこ」
霧島「スタッフは?」
加藤「朝田が連れてきた看護師が一人だけ」
霧島「連れてきた看護師?」
加藤「NGOで一緒だったっていう若い子。
 ハア…。こんなもんでいいのかなあ…。
 人に頭下げたことないから分からないわ」
(霧島、看護師に覚えがあるらしい)

明真、
看護師「先生! 急患の連絡です!」 
伊集院「えっ? あっ、僕は違う…」
看護師「受け入れていいですか?」
伊集院「それはいいでしょ。うちは救急指定病院だし…」

その後、
権藤「バカ野郎!
 ERでもないヤツがなに勝手にホットライン受けてんだよ!
 しかも重度のショック状態だっていうじゃないか!
 助かりっこねえだろ!」
伊集院「でも明真は救急指定…」
権藤「バカ! まだ自分のしてることが分かんねえのかよ!
 おまえが受けた患者とその付き添い、
 救急隊の報告によると、国籍不明の外国人なんだろ!?」
伊集院「でも、国籍はどうあれ、人の命に…」
権藤「あるんだよ! おそらく保険証なんてない!
 病院が治療費負担しなくちゃいけないんだ!
 病院は、慈善団体じゃねえんだよ!」

救急車内、
(外国語の叫び声)
隊員「大丈夫、もうすぐ病院着くから」

救急車到着、
権藤「あっ、下ろさないで! 下ろさないで、下ろさないで!
 すいません、ウチのミスなんですけど、
 部外者がうっかり受けちゃったんです。
 ホント今、当直がみんな手がふさがってるんですよ。
 すいません」
隊員「あなたはどうなんですか?」
権藤「わたしも今から手術がありますんで。
 あの、悪いけど、ほかの病院当たってね。ねっ、ねっ」

隊員「外国人と分かると、どこでもそうですね」
隊員「かわいそうですね」
(外国語の抗議)
隊員「行って下さい」

去っていく救急車。
その前に朝田龍太郎が立ちふさがる!
朝田「何してんだ? 早く下ろせ!
 (救急車の後ろ扉を)開けるぞ」
隊員「下ろします!」
朝田「血圧は?」
隊員「70-40です」
朝田「サチュレーションは?」
伊集院「何やってんですか!」
朝田「どいてろ!」
(外国語の懇願)
朝田「分かってる、大事な友達なん…」
(外国語の懇願)
朝田「安心しろ。俺は医者だ」

病院内、
権藤「どうした? どうした?」
朝田「意識レベル低下してるぞ、急げ」
看護師たち「はい!」
権藤「何だ、お前は!」
朝田「胸部心臓外科の朝田だ」
権藤「今、当直が手がいっぱいで…!」
朝田「手がいっぱいなら俺が診る」
村田「チアノーゼ出ています!」
朝田「腹腔内(ふくくうない)に大量出血してる可能性がある」
権藤「おいおい、勝手なことするなよ!」
朝田「連れていけ」
看護師たち「はい!」
権藤「待てよ! こんなショック状態の患者、一人で診る気か?」
朝田「助手はいる。胸部心臓外科の伊集院だ」
権藤「何言ってんだよ。あんなヤツに何が出来るんだよ」
朝田「優秀だよ。少なくともお前よりはな。
 行くぞ、伊集院」
(伊集院は慌てて付いて行く)

手術室、
朝田「胸部骨盤に異常なく、ファストにてモリソン窩(モリソンか)。
 脾(ひ)周囲にエコーフリースペース。
 輸液はノンリスポンダーだ。
 開腹」
看護師「はい」
朝田「開創器(かいそうき)」
伊集院「はい」
(開いてみると…)
伊集院「血で何も見えない!」

見学室、
権藤「なんて勝手な! 責任は誰が取るんだ! ったく!」
荒瀬「何? 手術?(しゅじゅちゅ〜) 誰だ、あいつ?」
ラリった荒瀬。

朝田「肝損傷だ。損傷箇所は三つ、S4およびS6 S8。
 プリングル法でいく」
伊集院「プリングル法?」

荒瀬「ハハハハ! プリングル法だって!」
権藤「肝動脈と門脈に同時に鉗子(かんし)をかけて、
 肝臓に流入する血液を遮断し、その状態ですばやく
 損傷箇所を縫合する」

朝田「門脈および肝動脈を遮断。損傷箇所の縫合に入る。
 1-0バイクリル」
看護師「はい」
朝田「伊集院、お前はほかに損傷箇所がないか探しとけ」
伊集院「はい」

荒瀬「できんのか〜?
 俺が前見たプリングル法は失敗して患者死んじゃったぞぉ」
権藤「損傷箇所が、1、2か所でも難しいのに、3か所なんて…」

朝田「メッツェン」
看護師「はい」
朝田「肝損傷1か所目、縫合止血終了」

権藤「早い…。まだ、五分しかたってない」
ラリってる荒瀬も目を細める。

朝田「メッツェン」
看護師「はい」
朝田「2か所目、縫合止血終了」
看護師「血圧上昇。80-60です。安定してきました」
村田「あと一か所」
朝田「伊集院、ほかに損傷箇所はあるか?」
伊集院「あ…、ありません」
朝田「最後はS6だ。肝臓持ち上げるぞ」
伊集院「はい」と言って持ち上げると、大量出血してしまった。
伊集院「あっ、あっ」とおびえて手放してしまう。
朝田「おい」落としそうなところを慌ててフォロー。
村田「血圧低下! 40!」
川田「出血止まりません!」
スタッフ「輸血追加!」
朝田「伊集院、必ず別の損傷箇所があるはずだ。探せ」
伊集院「あっ、あっ…」
朝田「今の状態でこの出血はありえない。
 俺は両手がふさがってる。お前のほうが探せるはずだ」
伊集院「僕のミスだ…。別の出血を見逃した…。
 僕が患者を、殺す…」

CM

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

朝田「早くしろ」
伊集院「は…、はい」

権藤「ここまでだな、やっぱり。
 損傷箇所を見つけてももう手遅れだ。
 結局どんな治療しても助からなかった。
 救命はそう甘いもんじゃないよ!」
荒瀬「どうかな?」
権藤「えっ?」

朝田「伊集院、落ち着け」
伊集院「だけど時間が…」
朝田「俺に任せろ!」
伊集院「えっ?」
朝田「チューブくれ」
看護師「はい」
朝田「右葉を押さえてくれ」」
看護師「はい」
朝田「シュロックシャントでいく。
 時間を稼ぐ」

権藤「シュロックシャント!?」
荒瀬「右心房と下大静脈(かだいじょうみゃく)を直接つなぎ、
 別の血流を作って、
 出血箇所を処置する時間を稼ぎ、同時に下大静脈からの
 出血の有無を確認している。
 シュロックシャントか…。
 やるじゃん、あのデカイの」
権藤「何てヤツだ!」

朝田「バルーンに10cc入れろ」
看護師「はい」
朝田「ペアン」
看護師「はい」
朝田「いいか、伊集院。虫垂炎を見つけたのと一緒だ。
 (首を振る伊集院に)お前なら、できる。
 落ち着いて探せ」
その言葉を受け、
伊集院は落ち着きを取り戻し、損傷箇所を探し始める。
川田「頑張って」
村田「頑張って」

そして…、
伊集院「ありました! ここです! ここです!」
朝田「よし、縫合に入る。5−0」
看護師「はい」
朝田「押さえてろ」
伊集院「はい!」

権藤「そんなバカな…」
荒瀬は朝田の実力を思い知る。

手術終了、
権藤「待て、朝田! 別の医局のくせして、
 勝手な手術して、ただで済むと思ってるのか!
 (看護師たちに囲まれ)
 何だよ?」
村田「もうそのへんにしといたらどうですか!」
双子恵・望「どうですか!」

(外国語の叫び声)同乗者が心配している。
朝田は親指を立てる。
(外国語の歓喜の声)

伊集院、医者として、大学病院の一員として、
何が正しいのか、思いにふける。

大会議、
野口「胸部心臓外科の医局員が
 急患を勝手に受け入れてオペをするという、
 とんでもないことを…」
教授「その患者、保険証もないので、入院させるウチの医局が
 治療費を負担させられるんですよ。
 お宅にも半分出して欲しいですね」
野口「先生には何と申し開きをしていいか…」
鬼頭「いいんです、野口先生。
 元はと言えばウチの失態。この責任はわたくしにあります。
 救命救急部で外国人の治療費用は全額負担させていただきます」

エレベーター、
鬼頭「話はつけた。あなたにおとがめはなしよ」
加藤「どういうことですか?」
鬼頭「金さえクリアしたら文句はないのよ、じじいどもは」
加藤「どうして?」
鬼頭「手術の様子聞いた。
 ウチだったら間違いなく救えなかった命を、
 朝田龍太郎が救った」
加藤「だから?」
鬼頭「その技術は、とても魅力的だってこと。
 あなたにはもったいないぐらいに、ね」

病院の外、
伊集院「これでよし、いきますよ」
(着信)
文子「ああ…」
伊集院「これがほら、若い人たちがやってるメールってやつです。
 これで僕の所にももう届きますよ。メールください」
文子「へえ、これが…。やっぱり先生はすごいわ」
伊集院「誰でもやってますって。文子さんもできますよ」
文子「無理よ」
伊集院「『わ、た、し、は』」
文子「へえ、細かいのねえ。よく見えないわ。
 ダメ。難しいわ」
(朝田が離れたところから二人を見守る)
伊集院「できますよ。やればできますって。
 いいですか? 『わ、た、し』」
文子「先生」
伊集院「ちょっと待ってください。えーと…」
文子「先生、わたし末期がんなんでしょ?
 いいの、分かってるのそれくらい。
 ただねえ…、そんなに命は惜しくないけど、
 もうちょっと楽に死にたいわねえ。
 あの人…、主人はとっても優しい人で、
 わたしが苦しがるとオロオロしちゃうの。
 かわいそうなのよ、あの人が」
何も言葉を返せない伊集院、
そして朝田は…。

五郎「そうですか。やっぱりあいつは知ってましたか」
朝田「はい。あとはご夫婦の問題ですが、
 あの抗がん剤は副作用が強い割に効果は望めません」
五郎「効かないとおっしゃるんですか?」
朝田「残念ですが」
五郎「でで…、でも、あれは新薬なんでしょ?
 効くかもしれないんでしょ?」
朝田「奥さんをさらに苦しめるだけです。
 既存の抗がん剤以上のものではないと思います」
五郎「あなた、よくそんなことを! 家族の気持ち、考えたこと…。
 (腹を立ててつかみかかるが、落ち着きを取り戻す)
 うすうす分かってはいましたが、
 そこまではっきりとは聞きたくなかった。
 でも、この病院で本当のことを言ってくれたのは先生だけです」

文子の病室、五郎は寝ている文子の手を握ってやる。

渋沢「他の病院に移りたい?
 何を言ってるんですか、佐々木さん。気は確かですか?
 新薬にかけたいって言ってたじゃないですか。
 いいですか?
 奥さんは末期のガンなんです。
 そんなに簡単に効くわけないでしょう。
 誰かに余計なことを吹き込まれましたね?
 あの朝田ってヤツでしょう?」
五郎「先生」
渋沢「何ですか?」
五郎「わたしは、あいつを楽にいかせてやりたいんです」

渋沢が加藤と出会って吐き捨てゼリフ。
「また余計なことやってくれましたよ! お宅の朝田が!」

内科、
渋沢「こんなことでTMTの治験がつまずくなんて…。
 あと10例で治験は終わる。
 ここで止まったら、俺のキャリアは終わりなんだ…」

夜、
渋沢「できればもしもに備えて、末期の患者にしたかったが…」
(TMT3をこっそり点滴に注入しようとして、
 朝田がその腕を捕まえる!)
朝田「患者はモルモットじゃねえんだよ。
 そんなにこの薬が好きなら…、お前に打ってやるよ」
渋沢「ひーっ…」
朝田「少しは患者の気持ち、理解できるようになるかもな」
渋沢「か…、勘弁してください…」

翌朝、
五郎「じゃあ行きますよ」
伊集院「はい」
五郎「はい、バター(シャッター音)。
 どうもありがとうございました」
文子「先生、ホントにありがとうございました」
伊集院「佐々木さん、お元気で」
文子「はい」
五郎「じゃあ、行こうか。失礼します。
 どうもお世話になりました」

転院先、
五郎「こんにちは、佐々木と申します」
看護師「よろしくお願いします」
五郎「こちらこそ」
(省略)

明真、手術室、
朝田「しっかり心膜つり上げとけ」
伊集院「はい。サッカーアップ」
朝田「ちゃんとモニター見とけ」
伊集院「はい」

桜満開の下を散歩する佐々木夫妻。

医局、
桜餅を食べる伊集院。朝田ものんびりしている。
加藤「佐々木文子さん、さっき亡くなられたそうよ」
朝田「そうか」
加藤「あなたのやったことに意味はあったの?」
朝田「何が言いたい?」
加藤「呼吸器内科ともめにもめて、
 転院させた意味があったのかってこと。
 結果は同じじゃない?」
(伊集院は着信ランプに気づいてケータイを開き、嗚咽する。
 朝田たちがなにごとかと、そのケータイを見てみる)
加藤「これって佐々木さんの?」
朝田「今朝のメールだ」

ひらがなだけ、大文字だけ、濁音もない、頑張って打ったメール。
(いしゆういんせんせいへ)
文子<先生、お世話になりました。
 本当にありがとう。
 先生のおかげで、桜餅も食べられるようになりました。
 楽しい毎日でした。
 これからも頑張ってください。 佐々木文子>

朝田「一生懸命打ったんだ。覚えたてのメール。
 伊集院、このメールはお前の勲章だ」
伊集院は嗚咽し続ける。
デスクには文子と撮った記念写真。

涙腺をくすぐる良い音楽とともに、泣きの名シーン!

教授室、
野口「やっかいなひとだねえ、彼は。
 バチスタには僕も期待してるんだけどなあ」
加藤「今適応患者を探しています。
 必ず成し遂げて、野口教授を明真大学の総長にしてみせます」
野口「うれしいこと言ってくれるね。
 でも、口だけじゃダメだよ。
 必ずバチスタ成功させてくれないと、
 朝田くんもろとも、君も、エントラッセン、だからね。
 気をつけてね」

医局、加藤の助教授室、
加藤「バチスタチームの二人目が決まった? 誰?」
朝田「伊集院だ」
加藤「伊集院? 僕ちゃん?
 何言ってんの? 研修医よ」
朝田「だからだ。あいつはまだ医局に染まっていない」
加藤「医局には、他にいくらでも優秀な人材が…」
朝田「腐った日本の医局に、優秀な人材などいない。
 俺があいつをスペシャリストに育ててやる」

木原「うっ! あまーい! お前はコーヒーも作れんのか!」
伊集院「すいません!」
木原「コピーとってこいよ!」
伊集院「あっ、はい」
木原「早く、もう!」

病院一階、
ミキがドラゴンに二つ目の星をつける。そんなミキを見つめる男…、
霧島「こんなとこにいたのか、ミキ」

終わり

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

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手術シーンで『村田』の名になってたのはきっと別の看護師だね。

キャスト
詳しい役名を現在把握しているけど、
ドラマの進行と共に徐々に明らかになった放送当時の感覚で、 今は書かない。

Cast
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朝田龍太郎(坂口憲二)
加藤晶  (稲森いずみ)
伊集院登 (小池徹平)
霧島軍司 (北村一輝)
荒瀬門次 (阿部サダヲ)
里原ミキ (水川あさみ)
木原毅彦 (池田鉄洋)
──────────
(千葉雅子)看護師、村田
(中村慧子)看護師、川田
(YUKO・AIKO [FLIP-FLAP])看護師
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(加藤治子)患者、佐々木文子
(井川比佐志)文子の夫、佐々木五郎
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(一戸奈美)看護師、西野
(小林すすむ)医師、権藤
(今奈良孝行)医師、渋沢
(児玉頼信)教授、東郷
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(夏秋佳代子)看護師
(海島雪)内科受付
(岡本竜汰)医師
(吉野真希)看護師←権藤の怒鳴るシーンではっきり映る
 よしのまき☆日々録 ウォーリー発見☆
 よしのまき☆日々録 占い(>_<)
(浅沼晋平)教授
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(堤匡孝)救急隊員? 手術参加の臨床工学士(スタッフ)?
(大塚洋)製薬会社員
(崔哲浩)ゴルフボール拾いの男?
(法福法彦)救急隊員
(石川泰子)看護師
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(高山猛久)ゴルフボール拾いの男?
(Francis)外国人の急患の付き添い?
(Tasbir)外国人の急患?
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藤吉圭介(佐々木蔵之介)
鬼頭笙子(夏木マリ)
野口賢雄(岸部一徳)
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脚本 林宏司
演出 久保田哲史

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posted by エデン at 22:00 . | Comment(1) | 医龍
この記事へのコメント
大変かもしれませんが、医龍三話以降もセリフ完全版書いてくださるとうれしいです。医龍4楽しみですね!
Posted by ちひろ at 2014年01月07日 14:00
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