「理美さんの友人の古葉詩織と申します」
「あの、理美は今…」
「(名刺を差し出し)弁護士をしております。
今日は、理美さんの友人としてではなく、代理人として来ました」
「代理人…」
悠斗は電車のおもちゃで一人遊び。
「チューリップで〜す。公園通過〜」
「単刀直入に申しあげます。
悠斗くんを理美さんに引き渡していただきたいんです。
もし承諾していただけない場合、こちらは法的措置も辞さない覚悟です」
「法的措置?」
「ええ」
「裁判にするつもりですか?」
「私としてはその必要はないと思います。
理美さんは悠斗くんの親権さえ渡してくれれば、
慰謝料も月々の養育費もいらないと言ってるんです。
あなたにとってこれ以上の条件はないですよ」
「いや、ちょっと待ってくださいよ」
「お二人の共有財産はこのうちと、銀行にある定期預金だと聞いています。
このうちはまだ新築同然ですから、
売却して、ローンの返済をされてはいかがでしょうか」
「いや、ですから、俺はまだ離婚に同意してませんよ」
「理美さんは離婚を強く望んでいます」
「ですから、なんで離婚なんです?
確かに、理美の気持ちを分かってやれなかったり、
ま、多少の行き違いがありました。
でもそれが離婚するほどの問題ですか。
唐突すぎて理美が何を考えてるのかまったく分かりませんよ」
「あなたにとっては唐突だったかもしれないけど、
理美さんにとっては…」
「いや、ですから、俺は、離婚するつもりもありませんし、
悠斗を手放すつもりもありません」
「分かりました。あなたの気持ちは理美さんに伝えます。
あ、そうだ、これ…、理美さんから預かりました。
あらためてまた伺います。失礼しました」
指輪を置いていった。
オープニング
ベッドで寝ている悠斗を見つめる亮平。
“「何描いてんだ、さっきから? 誰それ?」
「僕とパパ」
「ふーん」
「それとマーマ」”
「あ、もしもし。今日弁護士が来たよ」
「詩織から聞いたわ」
「明日会えないか? ちゃんと話そう」
「直接会っても感情的になるだけよ。私の気持ちは詩織に話してあるわ」
「少しの時間でいいから。昼休みだったら俺時間取れるよ」
朝、弁当作り、揚げ物だ
「うわぁ、危ねえ! なんでこんなはねるんだ、悠斗?」
# 放り投げるように入れるからさ(笑)
そこへ来客、津久野が入ってきた。
「先輩、おはようございます」
「津久野っちー!」
「つーか、微妙に似合いますね、そのエプロン」
「なんだよ急に、おまえ」
「悠斗、幼稚園のしたく、出来てる?」
「うん」
「じゃあ行くか」
「ちょっと待て、行くかってどこに行くんだよ」
「悠斗の幼稚園です。今日は僕が送っていきますんで」
「どうして?」
「どうしてって聞くなよ、お前(笑)」
「どうして?(笑)」
「それは、先輩の役に立ちたいからでしょ。
じゃあ行こうか、悠斗、ねっ。
じゃ、先輩、いってきます」
「いってきまーす」
「津久野…、津久野…、ちょっとおまえ…。
行ってらっしゃい。
あ、弁当!」
幼稚園の門
「美帆先生、おはよう」
「悠斗くん、おはよう」
「おはようございます」
(キョトーンな美帆先生)
「あの…、これから朝はなるべく僕が来ることにしました。
頼まれちゃって先輩に。
あの、朝っぱらからいきなり何ですが、
よかったら今日晩御飯でもいかがですか。
おいしいカンボジア料理のお店を…、あれっ?」
(照れ隠しに背を向けて話している間に悠斗たちは中へ入っていた)
小雪ママ「カンボジア? あの、ちょっとよろしいかしら?」
「あれっ? あれっ?」
ゆかりママ「最近悠斗ママ見かけないけど、どうしたの?」
「ちょっと…」
健太ママ「ちょっと、なんなの?」
「えっと…、旅行です、旅行」
小雪ママ「旅行!?」
「はい」
健太ママ「いつ帰ってくるの?」
「ん〜、すぐには…、なんせ語学留学ですから」
ママたち「留学〜!?」
「すぐには帰れない。何か不都合でも?」
小雪ママ「悠斗ママ、バザー委員なのよ」
「バザー委員?」
昼休み
「驚いたよ、突然弁護士だなんて」
「ごめんなさい」
「理美にあんな友達がいるなんて知らなかった」
「何度も話したわよ、詩織のこと。あなた、私の話なんか全然聞いてないから」
(沈黙)
「悠斗の弁当けっこううまく作れるようになったよ。
幼稚園の佐伯さんって人に教えてもらって」
「佐伯さん?」
「うん、地域のボランティアの人。
けっこうね、悠斗の面倒よくみてくれるんだよね」
「そう」
「うん。おかげで俺も少しはまともな弁当作れるようになったよ」
「だから?」
「いや、だから…」
「お弁当が作れるだけじゃダメなの。
子供育てるってのはそんな簡単なことじゃないの。
あなたに子育ては無理よ。
悠斗を私に返して。お願いします」
頭を下げる理美。
(沈黙)
「理美…、
悠斗のために帰って来てくれないか?
悠斗はあの家でパパとママと三人で暮らしたい、そう思ってるんだよ。
俺の悪かったところは改めるから、だからやり直そうよ」
(沈黙)
「あの家を出るのに、どれだけ勇気がいったか分かる?
戻っても、またおんなじことの繰り返しよ。
でももう二度とあの勇気を出せないわ」
「仕事がしたいんだったらすればいい」
「仕事は大切よ。でもそういう問題じゃないの」
「じゃどんな問題だよ」
「あなたとは、もう一緒に暮らせないの」
「そんなにオレのことが嫌になったのか…」
「仕事の打ち合わせがあるから…、行くわ」
「好きなヤツでもいるのか?
見たんだ、おまえのマンションの前で」
「最低ね、あなた」
仕事中の亮平
(理美の声)“あなたとはもう一緒に暮らせないの”
斎藤「上川君」
「はい」
「ちょっといいか」
「はい」
屋上で二人
「はっきり言うが、部内が君の事でぎくしゃくしているんだ。
出張しない、残業しない、当然他の人間に
そのツケがまわってくるからな」
「申し訳ありません」
「前の会社でリストラを担当していた君なら分かるだろう。
いつ首を切られても文句を言えない状態だよ。
君を採用したのは俺だ。君の能力を高く評価している。
しかし、特別扱いにも限界があるぞ」
幼稚園
浅野由美子「あ、ご苦労様です」
「どうも」
「悠斗〜」
(小雪ママたちが駆け寄ってくる)
「どうも」
小雪ママ「これからバザーの打ち合わせをします」
「バザー?」
小雪ママ「私たちバザー委員です。健太ママと、ゆかりママ」
ゆかりママ「それから、小雪ママ」
ママたち「よろしく」
「あ、あの…」
小雪ママ「悠斗ママの代わりに悠斗パパがバザー委員、
引き受けていただけるんですね?」
「はっ?」
ゆかりママ「今朝、大学の後輩って人が言ってましたよ。
バザー委員は悠斗パパが責任を持ってやるからって」
「あのバカ…」
健太ママ「じゃ、早速打ち合わせいいですか?」
「いや、ですから仕事が忙しくて、バザーなんて、ちょっとごめんなさい、
悠斗、悠斗」
小雪ママ「だったら留学先から奥様、呼び戻していただきたいわ」
「はっ?留学?」
ゆかりママ「やっていただけるんですか? バザー委員」
「ですから仕事のほうがちょっと立て込んで…」
(理美の声)“お弁当作れるだけじゃダメなのよ”
“子供育てるってのはそんな簡単なことじゃないの あなたに子育ては無理よ”
「分かりました、やります、バザー委員」
小雪ママ「まずは…、委員長を決めましょう。では、一斉に引きましょう」
(くじを引くと、亮平が委員長に)
小雪ママ「ではそういうことで」
ゆかりママ「後輩の人が言ってたけど、
悠斗パパってやるときはやる男なんでしょう?」
健太ママ「期待してますよ、委員長」
小雪ママ「はい、委員長に拍手〜」
家
「悠斗、バザーって何やるの?」
「焼きそば」
「よし、やるか、悠斗」
パソコンでお知らせ広告作り
「えーっと、バザーの提供品として、新品の日用品、手製の雑巾三枚…、
手製?」
「ごめんください」
「おお、どうしました?」
「あの…、佐伯さん、雑巾縫えます?」
「雑巾? ええ、そりゃ、まあ」
「教えてください」
「お願いします」
「おっ…、おお。どうぞ(中へ)」
「痛っ!」
「あっ、気をつけて。
針だけ動かすんじゃなくて、針と布を一緒にこうやって…」
「あぁ、そうか」
「いや〜、しかしああやって母親同士の輪の中に
入るっていうのは本当大変ですね」
「どうして、バザー委員長引き受けたんですか?」
「意地です」
「意地?」
「ええ。女房に言われたんです。
子育てっていうのは弁当作るだけじゃない。
あなたに子育ては出来ないって。
まぁ、バザーぐらいやってやるよ、そんな気持ちで。
まぁ、少しは女房の苦労が分かりました」
「そうですか」
「ええ、いまさら遅いですけどね」
「遅くはないですよ」
「そうですかね」
「ええ、遅くないです」
「あの…、前から聞きたかったんですけど、
佐伯さんはどうして幼稚園で働いているんですか?」
「女房がね、幼稚園でボランティアをやってたんです。
それが毎日楽しそうで、
どうして幼稚園だったんだろうかって、あれが死んでから考えてみたんです。
女房と同じように幼稚園でボランティアをすれば、
それが分かるような気がしたんです」
(その言葉は亮平の心に響いたようだ)
亮平が糸を歯で噛み切る
「おぉ〜、出来るじゃないですか」
「へへへっ、ここだけです。
母親が縫い物をしてるのを見ててここだけは。
いや、母親は糸切り歯がなくて、こうやって、
最後のこの切るところだけは自分がよくやらされてたんですよ。
ま、どうせこんなことになるんだったら
ちゃんと教わっておけばよかったですよ」
「お母さん、どちらに?」
「僕が高校の時に死にました。くも膜下出血で」
「そうでしたか」
「父親はちょうど三才の時に交通事故で…。
まあ…、小さかったんで、父親のことはあんまり覚えてないんです。
母親はいつも働いていて外に出てたんで、
自分ひとりでなんでも決めてやってました。
受験も就職も…、結婚も。
転職や家を買うことも、みんな自分で決めて、
でもそういう…、
自分のやり方っていうのが耐えられなかったんでしょうね。
あいつや悠斗のためだと思ってやってきたことなんですけど、
ホント分かってくれなくて…。
ま…、すいません、愚痴でした」
「いえいえ。
さあ、出来ましたぞ」
「じゃあ最後の切るところだけ」
糸を噛み切り、仕上がりを確認する亮平。
「お〜、すげえ、真っ直ぐですね。俺のは…、最悪です」
「どれどれ、
いやぁ…、最悪ですね(笑)。
よし、こっちいきましょう」
「はい」
# 縫い目ががたがたです(笑)
CM
会社、亮平のケータイに電話(振動)
「はい。あ、小雪ママですね。あっ、昨日はどうも」
女性社員1「『小雪』のママだって」
男性社員「朝から飲み屋のママと電話かよ」
それを遠くから見る斉藤部長
(バザーの打ち合わせだ)
「はい、変えましょう、はい」電話を切る。
「焼きそばが5円高い…」パソコンで予算表を作っている。
(さらに振動)
「はいもしもし上川です。あ、健太ママ。
え? あの…
ちょっと待ってください(周りを気にして席をはずす)。」
女性社員2「健太ママだって」
男性社員「これ(オカマ
)かよ」
夜、幼稚園
悠斗と美帆「おしまい」
「すいません、遅くなってしまいました」
「パパ〜」
「悠斗、お待たせ」
「お疲れ様でした。
あの、これ…、もしよかったらバザーに出してください。
委員長が出さないと、色々と言われてしまうでしょうから」
(手製のバッグを数枚だ)
「ありがとうございます、助かります」
「いえ、お役に立てればうれしいです」
「あの、お礼って言うのもなんですけど、もしよかったら晩飯どうですか?」
「あっ、はいっ!」
幼稚園を出る三人、弁護士がそれを見る。
「僕、ハンバーグがいい!」
「ええ? またハンバーグかよ、おまえ(笑)。
美帆先生の好きなものにしようよ。何がいいですかね?」
「私もハンバーグ」
「うわぁ」
「あはは」
悠斗と美帆「イェイ」
サブちゃん「はいよ〜、ハンバーグお待ち!」
「なんか悪いね、メニューにないのに」
民子「材料あるんだから何でも言ってよ。ね〜、サブちゃん」
サブちゃん「なんだって作るっつうんだよ、はっはっは」
客「サブちゃん、砂肝10本」
サブちゃん「はいよ、10本ね」
悠斗と美帆「いただきます」
「はい。うまいぞ、ここのは」
美帆「うん、おいしい!」
「でしょ!」
「おいしい!」
「うまいだろ、な! うまいんだ。
あ、悠斗、ちょっと待って(ハンカチを前掛けにする)」
美帆「上川さん、頑張ってますよね。
お弁当だって、バザー委員だって。
私、最初は上川さんのこと、
なんて無責任な父親なんだろうって思ってたんですよ。
あ…、すみません。
ふふっ、でもそれは私の思い違いでした。私応援してますから。
(悠斗に話し掛ける)おいしい?」
「うん」
美帆「いっぱい食べてね」
「うん」
「よし、じゃあパパも食べよう」
店の外から弁護士が見ている。
家、バザーのお店などのポスターを画用紙で作成。
「よし、出来たぞ。
あっ! バカ、おまえ、何やってんだよ、おいおい…。
(背後で悠斗が金魚すくいのポスターに金魚の絵を大きく描いていた)
字が見えなくなっちゃったじゃないかよ、字が…。
まっ、いいか」
「うん!」
バザー当日
「みなさん、おはようございます。
みなさんのご苦労の甲斐があって、
今日こうしてバザー開催にこぎつけることが出来ました。
今日一日、事故のないように、
皆さんと力をあわせてバザーを成功させましょう」
小雪ママたちがあの雑巾を持って駆け寄ってくる。
「誰かしら、ひどすぎるわ、人格を疑いますね」
亮平は“俺知らね”という表情(笑)
亮平の焼きそば作りを手伝う悠斗が楽しそう。
運動場にたくさんの出し物。
金魚すくい、ヨーヨーすくい、たこ焼き、ミニSL(電動)、ゴムボールとペットボトルを使ったボーリング、脇役先生によるマジックショー、亮平による餅つきなど。
エキストラの人たちも楽しんだでしょうね。
夜、居酒屋
石澤「それでは、今日のバザーの売上を発表いたします」
浅野「10万2千飛んで10円。昨年の売上を大きく引き離して
この五年でダントツの一位です」
(みんな拍手)
美帆「売上金は全額幼稚園に寄付していただくことになりました。
みなさん、ホントにありがとうございました」
(みんな拍手)
津久野「いや〜、よかったですね」
「あれ、おまえ、なんでここにいるの?」
「どうして〜?」
津久野「どうしてって、聞くなよ〜(笑)」
「どうして〜?」
津久野「そりゃ、あの、先輩のお役に立ちたいからでしょう、
ね、美帆先生?」
美帆「それでは、本日のバザーの成功を祝して、かんぱ〜い!
」
無視され、さらにグラスのない津久野(笑)
「いやしかし、やるときはやる男ですね、先輩は」
「パパ、津久野っちね、美帆先生のこと好きなんだよ」
美帆の耳に聞こえたようだが、まったく気にしていないようだ。
津久野の小ネタショー
「続きまして、びっくりした時の松本明子の顔!」
「コマネチ! 結局コマネチ」
二人で静かに食べている亮平と悠斗。
「悠斗、今日楽しかったね」
「うん!」
「パパさ、バザーなんかホントは最初はやりたくなかったんだけど、
やり始めたら意外と楽しくなっちゃってさ」
「かっこ良かったよ、パパ」
「おぉ、そうか」
美帆「上川さん、ちょっとこっちへ来ていただけますか?
悠斗くんも。早く早く」
みんなが待っていた。
小雪ママ「委員長。バザーの最大の功労者は委員長です。お疲れ様でした!」
花束と拍手を贈られる亮平。
CM
au 中田喜子さん、シンちゃんの奥さんが出演してるのね
朝、時計を見ると7時45分
。悠斗の部屋へ走りこむ亮平。
「悠斗、悠斗、起きろ、起きろ、遅刻だぞ、ヤバイぞ、ヤバイぞ
悠斗、遅刻、遅刻だよ、遅刻!」
いざ幼稚園につくと門が閉まっていた。
「あれっ、どうなってんだ?」
「今日休み〜?」
「休み? だって今日月曜日…、あっ、そうだ! バザーの代休だ、悠斗!」
「うっそ!?」
「なんだよ、なんで気づかなかったんだろう」
「どうする、パパ〜?」
ケータイで晋一郎に電話する亮平。
「あぁ、ダメだ、シンちゃん、留守だ」
「パパ…」
亮平が会社に行くには、悠斗を誰かに預けなくてはいけない。
理美の電話番号を出すが、かけずじまい。
詩織「向こうはかなり意地になってるわ。
このままだと悠斗くんは手放さないわね」
理美「今まで仕事のことしか頭になかったくせに、
今さら悠斗を育てるだなんてどういうつもりなの?」
「このままだと、当事者間で話し合っても平行線のままだと思う。
思い切って家裁に調停を申し立てたら?」
「調停か…」
「調停が不成立に終わったら裁判に持ち込むのよ。
いい? 理美。
旦那は仕事人間で、あなたたちをずっとほったらかしてきたわけでしょ。
裁判で争ったら勝てると思うの。
それに、理美はお金なんて要らないって言うけど、
女手ひとつで子供育てるのは大変よ。
悠斗くんの将来のためにも、慰謝料や養育費はちゃんともらったほうがいい。
そのためにも法的手段で訴えたほうがいいのよ」
「できればそういうことはしたくないな」
「理美、旦那に気持ちがあるなら早く帰ったほうがいいよ」
「どういうこと?」
「彼はモテるみたいだから」
「女の人がいるの?」
「分からないけど」
悠斗は会社に一緒に行ったようだ。お絵かきをしている。
女子社員1と2「うわ〜すごい上手。
はい、悠斗くん、ジュース飲んでね、お菓子もどうぞ」
「どうぞ、おかまいなく」
「おかまいなく、だって〜。かわいい〜
」
斎藤「やっぱり無理だな」
「えっ?」
「三橋精工さんの高橋部長からのメールだ。
先週、君が出した見積もりにミスがあったという指摘だ。
うちの大事なお得意様だぞ。悪いが、君には辞めてもらう」
その夜、家
「パパ、明日もパパの会社行っていいよね?」
「パパ、あそこの会社にはもう行かないんだよ、悠斗」
「どうして〜?」
「クビになったの」
「クビ?」
浅野由美子「お外で鬼ごっこする人〜?」
園児たちは元気に外へ出て行くが…。
シンちゃん「悠斗、どうしたんだ? 元気ないな」
「シンちゃん。クビってなあに?」
「クビ? そうだな…。会社を辞めさせられてしまうことかな」
「やっぱりそうだ
」
「どうしたの?」
「僕のせいで、
僕がパパの会社に遊びに行ったから
パパ、会社クビになっちゃったんだ
」
「悠斗くんのせいじゃないよ。気にしない気にしない。
よし、シンちゃんと外行こう、遊ぼう」
亮平は会社の面接
「人事部の細田です」
「上川です。よろしくお願いいたします」
「久しぶりですね。
覚えてませんか?
かつて、同じ会社で働いていた仲間じゃないですか」
「あっ、たしか…」
「営業でした。君が経営統合によるリストラ担当。
君とはよくよくご縁があるんですね。こんなかたちで会えるなんて」
「失礼します」
「待ってください。君にリストラされたこと、私は恨んでませんよ。
それより、君ほど優秀な人材が我が社に来てくれるのは、大歓迎なんです。
これから一緒に、この会社を盛り立てていきましょう!」
無駄だと思い去ろうとしたのに、歓迎された。
民子「そう! 就職決まったの!」
サブちゃん「良かったな、亮ちゃん!」
「世の中捨てたもんじゃないよね、ホント感激しちゃったよ」
「良かったね、パパ」
「ああ、明日からパパ頑張るぞ」
「うん!」
民子「いじらしいじゃないの、ふたりとも
」
新しい会社
「おはようございます」
「おはよう、待ってたよ、じゃあ行こうか」
仕事場と思われたオフィスからどこかへ。
CM
「この倉庫、整理することになってね。
ここの書類をシュレッダーにかけてください」
「全部ですか?」
「(うなずく細田)
それと、こっちの荷物を全部隣の部屋に移してほしいんです。
君のような優秀な人に、こんなことさせてすまないけど、
とりあえずお願いします」
「はい、分かりました」
少し不満ながら…。
荷物を運び、書類をシュレッダーに。
シュレッダーが言うことを聞かずに止まってしまい、
叩いて直そうとするのが面白い。
そして出来上がったゴミ袋は10を越えそうだ。大変な単純作業。
社員「あれっ? ここに置いてあった書類知んないかな?」
「あ、それだったら、シュレッダーで破棄しましたけど」
社員「えっ!? 誰の許可でそんな勝手なことしたんだよ!」
「人事部の細田さんです。
あっ、細田さん。ここにあった書類なんですけど、
全部シュレッダーで破棄するようにっておっしゃってましたよね?」
「言いましたよ」
「ですよね」
「ただ私は全部とは言ってませんよ」
「えっ?」
「私が指示したのは、ここにあった五つのダンボールの書類ですから」
「いやっ…」
社員「なんてことしてれたんだよ、あんた。どう責任とるつもりなんだ!」
「いや、すいません、彼は今日入社したばかりなんで」
「ちょっと待ってくださいよ」
社員「とにかく、上に報告してくる!」
「いや…、すいません。
(細田に対し)どういうことですか?」
「気にすることありませんよ、どうせ古い契約書だから。
ただ、君ももう少し注意してほしかったですね。
あっ、それより君に謝らなくちゃいけなくて。
上にも困ったもんですよ。
この倉庫、資料室にすると言ったかと思ったら
やっぱり倉庫のままでいいって言うんですよ。
悪いけど、今日中にさっきの荷物全部戻しといてもらえますか」
「あの…」
「頼みましたよ」
ケータイで連絡
シンちゃん「分かりました。それじゃあ、お宅で悠斗くんをみてますよ」
「なるべく早く帰るようにしますんで。
で、鍵なんですけど、悠斗が分かってますから。お願いします」
「ご心配なく。じゃあ」
皆が帰り始めるころ、職場へ亮平がやってくる。
「倉庫の整理、終わりました」
「ご苦労様」
「お疲れ様でした。失礼します」
「あっ、上川君!
君、明日から来なくていいですから。
営業部長が怒鳴り込んできてね。
参考にしようとしてた契約書がシュレッダーされたって」
「でも、あれは細田さんの指示で…」
「自分のミスを他人(ひと)のせいにするなよ! お疲れ」
「あんた、はじめから俺を雇う気なかったんじゃないか」
「ある日突然リストラされた人間の気持ちがどんなもんか!
少しは分かったか、あ!? ウヒヒ、アハハ、イヒヒ」
亮平が怒り
で細田の胸倉を掴む
「殴れよ、警察に突き出してやるから、殴れよ!」
黙って去る亮平。
屋台で酒を飲む亮平。
“ある日突然リストラされた人間の気持ちがどんなもんか!
少しは分かったか”
宿本「最初のプレゼンにしては上出来ってとこかな。
最近、どんどん昔の感覚を取り戻してるみたいだね」
理美が亮平を見つける
「じゃあ、私ここで…。お疲れ様」
屋台
「悠斗は?」
「あれっ」(酒で出来上がった亮平は珍しい人=理美を見て驚く)
「悠斗は?」
「うち」
「ひとりで?」
「まさか」
「誰が面倒見てるの?」
「佐伯さん」
「佐伯さん?」
「そう」
「悠斗を他人(ひと)に預けて何してるのよ。
やっぱりあなたに子育ては無理なのよ
子供を他人に預けてこんなところでお酒を飲んで、父親失格よ。
そんなんだったら悠斗を私に返して」
「なあ理美、どうして俺たちこんなんになったんだ?
俺たち…
(宿本の姿を見つける)
ごちそうそうさん、じゃあ」
「ちょっと待って!」
# 理美、話があるなら追いかけろよ。
# 佐伯のことは前に話しているぞ。理美も亮平の話なんて聞いちゃいねぇか?
シンちゃん「お帰り」
「遅くなりました。すいませんでした」
「残業ですか、いきなり」
「ええ…まあ」
「飲んでるんですか?」
「あの、今日は、ありがとうございま…、ありがとうございました」
「どうしたんですか? 何かあったんですか?」
「クビになりました。
人事担当が昔俺がリストラした人だったんですよ。
いや、初めっから雇う気なんかなかったんだよなぁ。
いや、見事に復讐されました。
俺は恨まれてたんですよ。
そりゃ、そうですよね。
誰だって、自分のクビ切ったヤツなんか恨みますよ」
「あんまり気にしないほうがいいですよ。
それじゃ、私はこれで」
「あの、ホントに、どうもありがとうございました。
もう悠斗のことでご迷惑をおかけすることはないと思いますから」
「は?」
「妻のところへ返します」
「本気ですか?」
「ええ」
「でも悠斗くんはここで暮らしたいと…」
「いや、こいつがいたらやっていけないんすよ。
こいつがいたら…。いや、妻の言うとおりです。俺には子育てなんて無理です。
これから連れて行きます」
「上川さん…、上川さん」
「何ですか?」
「悠斗くんの気持ちも考えてやったらどうですか?」
「いや、俺は、親失格ですよ」
「失格なんかじゃない。上川さん、一生懸命やってますよ」
「この前も言ったじゃないですか。
俺はただ意地張ってただけなんですよ。
こいつのことなんて別にどうでもいいんです」
悠斗を起こそうとする亮平
「上川さん、上川さん! 待ちなさいって」
「あんたに関係ないじゃないですか!」
「バカ者!」鉄拳制裁
「パパ…、シンちゃんとケンカしてんの?」
(悠斗が起きてしまった)
シンちゃん「いや、なんでもないんだよ」
頭をなで、帰っていった。
夜、ベッド
「パパ」
「ん?」
「シンちゃんと仲直りしてね」
「ああ」
「僕も謝ってあげるから」
「ああ」
「おやすみ」
シンちゃんは自宅で殴った手を見つめる。
亮平が悠斗を寝かしつけて、テーブルに行くと、
晋一郎が晩御飯を用意してくれていた。食べながら涙が出てくる亮平。
☆
次週は理美の父として夏八木さん登場。
渡さんと同席するシーンがあり、渋い演技対決があるかな。
ろくに感想を書いてないけど、どうせたいしたことを書くわけじゃないのでこれでよし。
同日深夜に放送されていた“夜回り先生・水谷修さん”の特集番組がとても強烈に頭に残った。
例えば、親のケンカを見た子供は自分のせいだと責める。優しい子ほど強く自分を責める。このドラマで言う悠斗だ。亮平のクビは自分のせいだと。決してそうではないのに。オレの昔を振り返ると、ケンカを見たとしても巻き込まれないこと、早く仲直りしてもらうことを優先して、自分を責めるなんてことはなかったなと。
その他、いろいろな問題や、泣けるエピソード(HIVのアイちゃんの話。自殺願望のある生徒を救えない校長が、学校を辞めて、その子を養子にした話)や、優しく生きる考え方などを教えられた。子供を実際に救うだけじゃなく、親世代を対象に講演を行なうこともあり、講演内容が素晴らしい。話す内容、話術、声の質、どの点も秀逸。
キャスト
上川亮平(竹野内豊)
上川理美(石田ゆり子)
津久野仁志(劇団ひとり)後輩
木下美帆(さくら)幼稚園先生
浅野由美子(清水由紀)幼稚園先生
石澤勝彦(石井智也)幼稚園先生
サブちゃん(金橋良樹)居酒屋板前
上川悠斗(宇都秀星)子役
民子(梅沢昌代)居酒屋「民ちゃん」女将
斉藤部長(近江谷太朗)
細田(小林すすむ)
小雪ママ(久保田磨希)
ゆかりママ(かんのひとみ)
健太ママ(雨音めぐみ)
社員(光宣・こうせん)書類シュレッダーの人
(飯沼千恵子)
(今泉あまね)女子社員2
(高木将大)同僚男性社員か、『ケイゾク』の朝倉役も
宿本和則(金子昇)
古葉詩織(木村多江)弁護士
佐伯晋一郎(渡哲也)
脚本 清水有生
演出 池添博
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